2010年9月14日火曜日

Apicius

東京、有楽町に「アピシウス」という日本最高峰のフランス料理店がある。初代料理長の高橋徳男シェフは2009年6月3日に亡くなられてしまった。本当に残念だ。僕は高橋シェフのもとで修業したことはないのだが勝手に「師」と仰いでいる。アピシウスの調理場へは何度もお邪魔した。僕が東京千駄ヶ谷でシェフをしていた時にはよくジビエを分けてもらいに行った。当時まだ若く、高橋シェフから見たら鼻垂小僧だったに違いない僕に丁寧に鴨の種類や選び方を教えてくれた。今では当たり前の様に実践しているが料理はまず素材選びが重要、というお話を何度も聞いた。それにアピシウスで頂く料理とワインは本当に美味しかった。僕は食事ではなく勉強に行っていた。そんな僕に高橋シェフや当時シェフ・ソムリエで現アルバス店主の仲田勝男氏はいつも「おまけ」をしてくれた。嬉しかった。とくにジビエに対する火の入れ方は勉強になった。いま全盛の「低温調理」や「定温調理」的な考え方はとっくに確立できていたと思う。あのリエーブルへの火の通し方はどうだ。完璧だった。いまでもコルベールの美しい羽をなぜる季節がやってくると高橋シェフの教えを思い出す。ありがとうございました。