2011年4月25日月曜日

Sharpen the knives

僕は「包丁で切る」という料理のプロセスにこだわっている。日本料理の料理人なら当たり前のことだけれど、西洋料理の世界ではそこに軸を置かない人も多い。包丁で切るという調理法そのものについて考えたらもういくら時間があっても足りない。

最近、「研いだばかりなのに切れない」と感じたことがあった。包丁を研ぐのはとても難しい。「研ぎ方が悪いのかな」と思った。僕は包丁を研ぐ度に「どうしたら向上できるのだろう」といつも考えながら研ぐ。まだ無心で研ぐほどの腕がないからだ。

で、比較的新しい昨年購入したばかりの片刃の包丁、刃材が安来白三鋼の本霞研、「研いだばかり」なのに何故だろうと考えながら鯛を切っていた。そして「もしかして切り方?」と思い始めた。

ほんの僅かだが、切りつける時の指の重心をずらしたら切れ始めた。そこで解った。僕は包丁を研ぐのが少し上達していたのだ。包丁が研げていると刃が滑って、素材に刃が引っかからない。逆に巧く研げていないと素材に刃が引っかかり、「切れる」ということが解らない人にはよく切れているような錯覚を与える場合もある。ノコギリを想像していただければ解りやすい。

研ぐのが巧くて、鋭利で滑る刃をコントロールできて初めて「包丁は切れる」のだ。

僕は今までどれくらいの時間、包丁を握ってきたのだろう。どれくらい素材と向き合ってきたのだろう。いったい何をしているのだろう。

その答えは「素材」と「包丁」がいつか教えてくれるに違いない。


私達は「TAP PROJECT 2011」に参加しています。