2011年6月3日金曜日

Bistronomie

勿論、苦労だってないわけではないのだが、それでも僕は高松にきて良かったと思っている。とても素晴らしい環境で仕事ができて、それを子供たちと共有できているからだ。

東京を離れたことで東京を客観的に見れるようになった。料理人の独立思考は以前にもまして強くなっているように思う。だが本当のガストロノミーを追及するのはとても難しくなりつつある。空間を含めたガストロノミーを実現しようとすると巨額な設備投資が必要だから個人ではなかなか、というのが現実だと思う。最近ビストロノミーという言葉を耳にするようになった。ほどほどの内装や立地条件でも料理はワンランク上を目指す、ということなのだろう。

小規模、少人数での運営が目立つ。夫婦二人でとか、下手をしたら一人でとか。人材の確保も難しい。そして何より手堅く商売が成り立つメリットがある。そういうレストランでは多分、お客様が得をできる。一人の料理人が誠意で作る料理をとてもリーズナブルに食べることができるのだと思う。大儲けしたくてやっている料理人はそういうレストランの主にはなっていないだろうから。

その手のレストランはもうムニュ(コース料理)を提示しない。ア・ラ・カルトで好きなように、食べたい物を食べたいだけ、というTPOが多いからだ。ガストロノミーはムニュ全体の流れで、ビストロノミーは何かに特化した個性のア・ラ・カルトで、というところかな。

いずれにしろ、我々レストラン業界はいつもその時代その時代の大きな時代の潮流に押し流され、その岐路を混沌とさまよっている。


私達は「TAP PROJECT 2011」に参加しています。