2011年9月29日木曜日

207 rue La Fayette, 75010 Paris

http://tomoshiroinoue.blogspot.com/2011/09/gare-takamatsu.html

1989年、今から22年前のこと。「207 rue La Fayette, 75010 Paris」は僕がパリに住んでいた時の住所だ。とても古いアパルトマンだった。住所をGoogleでサーチしてみたら今でも現存していて、不動産屋さんのサイトに引っかかった。先日、JR高松駅にいったらふと22年前のことを思い出したからだ。

あの時は最初の修業先であったシャンパーニュ地方のランスから一年ぶりパリになんの当てもなく一人で出てきて、カルチェ・ラタンやオデオンあたりの安いホテルに泊り、パリで暮らすためのアパルトマンと仕事を探していた。「もし住める部屋が見つからなければ日本に帰らなくてはいけないのかなー」、などと考えたりしてとても不安だったように思いだ出す。しかし僕は日本からの片道切符で飛行機に乗り、何と信じがたいことに帰りの飛行機代も持っていなかった。だから何としてでも仕事と部屋を探さなければならなかったのだ!今考えてもゾッとするような話だ。

色々苦労はしたけれどなんとか部屋が見つかった。1890年に建てられ、当時も傾いたようなアパルトマンで部屋には「レミー」がいて上階からは神への祈りの声と音楽が聞こえ、隣人の友人は廊下で泥酔していた。知らないうちにファサードの玄関のパスワードが変更されれば朝まで部屋に入ることができなくなったが誰も僕の心配はしてくれなかった。あの時に「生き抜く」すべを知った。

しかし仕事を見つけるのは楽しかったし苦にならなかった。パリにはミシュランの星を獲得している最先端のレストランがきら星のごとく存在していたからだ。片っぱしから星付きレストランを周り仕事を探した。

僕は潔く色々な思い出や物を捨てる。その半面執着のある物はとことん保存する「癖」がある。当時のパリの部屋の契約書なんかもそのうちの一つだ。だって、あの時の経験が今の自分を支えていると思うからさ・・・。