2012年1月20日金曜日

Couteau

日本料理の世界では「包丁」の仕事がとても大切だ。「切る」、という技術が調理方法そのものであるからだ。生の魚自体は素材だけれども「切る」ことにより「お刺身」という料理になる。焼いたり煮たりせず、包丁により形を変えることでとても高度な料理になる。これはすごい。日本料理を世界に誇れる要素は色々あるけれど、その中でも大きな特色だと思う。

そんなわけで僕も和包丁を使う。日本の包丁に誇りをもっているからだ。

日本料理の本などを見て勉強したりもするのだが、最近思うのはフランス料理などの洋食の分野においては「お刺身」的感覚で「カルパッチョ」を美味しく造ろう、といった包丁の使い方よりも、むしろ火の入った肉や魚を切るのに有効だと感じている。

例えば、適切に加熱調理した肉であっても切れない包丁で押しつぶしてしまっては意味がない。よく切れる片刃の和包丁で切れば、細胞をつぶさず、肉のジュースを逃がさず、「ジュスト・キュイ」の意味がより増してくるのだ。

片刃の和包丁を洋食に取り入れる意味はむしろ火の入った素材。これは切りつけてから火を入れる頻度の多い日本料理と、焼いてから切り分けることの多いフランス料理の特性と日本の文化の融合だ。

何かが開けた、そんな瞬間だった。