2012年1月18日水曜日

Temperature

この数年よく耳にする「低温調理」とか「適温調理」という調理は実際には随分昔からある考え方だ。そもそも「シャルキュトリー」の分野では100年以上前から「ハム」が作られていたではないか。

ロースト・ビーフを綺麗なロゼに焼き上げるために肉の中心温度を何度にすれば良いかなどは、目盛りを赤、青、などで色分けして、赤の温度ならロゼ、青ならレア、というような表示の付いた針式クッキング・メーターはかなり以前から家庭用レベルで販売されている。

今はそのような温度管理を街場のレストランで満席の状態でもいかに確実に「当たり外れなく」実現するか、という部分に挑んでいるのだと思う。調理をより化学的アプローチで研究する動きは加速度的に進行している。情報もゆきわたり、その結果全然美味しくない「低温調理」が氾濫してしまったのも事実だが・・・。

そういった分野においては企業の食品加工工場での運用研究の方が遥かに進んでいる。

近年、実際に注目されているのは、中心温度と常にリンクしている表面温度とのバランスだ。ロースト・ビーフの火の入り具合のグランデーションは「中心温度と表面温度の差」から生まれる色だ。中心温度と表面温度の差が0℃ならグランディーションはなく肉の内部は均一な焼き加減となる。表面温度の方が高い差異になればなるほど中心とのコントラストはきつくなる。全体の温度が低ければ生に、高ければ火が入っている。

素材によりタンパク質の種類が違うのでその変性温度も一定ではない。だから肉や魚の種類で適切な加熱温度、すなわち中心温度と表面温度とその与え方はそれぞれ異なる。

まず肉の表面をリソレしてからオーブンなどで中心めがけて加熱を促進し、ルポゼして中心温度をコントロールするのは従来の方法。逆に肉をオイル・バスやウォーター・バス、スチーム・コンベクション・オーブンに入れて全体を均一な温度にコントロールした後に炭火焼などで仕上げる、これは最近の手法。

しかし、均一なロゼに仕上がっていたからといっていつも料理が美味しいわけではない。昔ながらの手法で上手に焼かれた「キャレ・ダニョ・ロティ」が現代的手法に凌駕されているとも思えないからだ。