2013年7月6日土曜日

Sustainability 6

フランスで修業している時、地方のレストランを訪れる機会を作っては遠くまで出かけていった。

地方のレストランはトラフィックの全くない、車でしか行けないような、真っ暗な山道を通らなければたどり着けない、そんなロケーションも珍しくなかった。レストランの前にたどり着くといつも扉は自然に開かれ「住人」が温かく迎えてくれた。

そして満席のダイニング!

この光景に何度遭遇したことだろう。これが僕のレストランの理想形となり目標となった。テーブルに運ばれる皿にはその土地の素材、伝統料理、更に料理人の感性とデザインが融合した驚きの表現がのせられている。多くの場合その料理人はその地で生まれ育ち、土地を素材を人を愛しているのが伝わってきた。

僕は東京でレストランを経営している頃からあの時の光景を思い出してはいつか地方の自然の中でレストランを開きたいとずっと夢にみていた。目前の海からの恵、市場から聞こえてくる活気、日焼けした農民の顔、マルシェに並ぶ不揃いで愛敬のある野菜たち。僕たち料理人はこの大地の声を食べ手に伝えるのが使命だ。ここ香川で農民や漁師から直接手渡しで受けとった素材をそのまま調理場へ運ぶことができる環境を得ることが出来た。市場以前の生産、漁の場からインスピレーションを受けることのできる土地。

この風土や土地、自然の豊かさを子供たちに伝え守ってゆかなくてはならない。それが料理人に与えれた重要な役割だと思うから。